なんだってなんだ

時折すんごい雨が降っていましたが、有楽町のマリオンの上で開催された「写真力ってなんだ」*1を聴きに行きました。関係ないけど、この建物ってちょっと思い出深いんですよね…。会場の雰囲気から言うと、観客の多くはいまだにデジタル写真に疑心暗鬼な「伝統的写真家」の方々が多数と見えます。
結論から言うと、私なりに非常におもしろい機会でした。きっかけとしてはやはり中村征夫さんが出るから、だったのですが、行ってみて特におもしろかったのは篠山さんの話でした。
最初に話したのは「新進写真家」篠山さん。「フィルム写真とデジタル写真なんて比較するもんじゃない、別のものだ」と、私が普段書いていることとまったく同じ事を言ってくれました。もうこれで私の心はカレのモノ。現在の仕事はほとんどデジタルで行っており、フィルムを使うのは粒子の粗さを生かす時くらいだと、スチル写真をつなぎ合わせて動画とした昔の作品と、最近のモーフィング等デジタル技術を使った作品を比較しながら語っておられました。
立松さん。テレビで見るそのままの話し方でした。自分では繰り返し「写真は素人」と言いながらしっかり知床の写真展などやっています。私は彼の写真、好きですけどね。小説と写真はどちらも情景を写すという点では似ているが、小説は後でいくらでも書き直せるから、でも写真はその時代、その瞬間を写すのよ、と言っておられました。この辺から今日のテーマの核心。今日のパネリストの中では一番デジタルに対する抵抗が強そうでしたが、「フィルムがなかなか手に入らなくて」とのこと。
中村さん。さすがにこのメンバーの中に入ると、一歩引いて見えるのは気のせいか。阪神淡路大震災の後に、子供が描いた母の絵を子供が撮った写真を、生涯もっとも記憶に残る写真だと言っておられました。フィルム、デジタルは半々だとか。この辺の話はおもしろかったけれど、パネルディスカッションの後にいつもの奥尻島の話に時間が割かれてしまったのはちょっと惜しかった*2。紅海での話とか、最新のネタをもっと掘り下げて欲しかったなあ。
田沼さん。携帯電話機でいくら写真を撮ったって、それを写真として残しておかないと、記録としての意味がぜんぜんなくてもったいないのよ、と。偉ぶっているつまらないオヤジだという印象があったけれど、一方で、さすがに写真歴が長いだけあって「時代をしっかり記録する」という写真家としての情熱はこの中では最強。ディスカッションでは日本での「写真資料センター」の設立をひたすら訴えていました。私も少しは理解したので、少し募金してきましたが(まぁ、無料のイベントでしたから…)。
こんなんでは書ききれないくらいいろんな話がありましたが、全般的に記録としての写真の意義、デジタル化に対する見解はちょっとずつ違っているようでしたが、さすがに広く人に見られる写真を撮っている(あるいは文を書く)人たちの話はおもしろかったのです。
ああ、私が普段考えていることも、決してマイノリティじゃないのだなぁと。
一つだけ器としてのイベントに苦言を呈しますと、スライドなどをスクリーンに映写する手際が非常に悪くて、誰かが話している間に後ろでノイズ的な画面が出るのは非常に目障りでした。あれなら何もない方がいいでしょう。だいいち、話している人に失礼では。
でも良かった。行って。

*1:日本写真家協会朝日新聞社主催 第1回フォトフォーラム「写真力ってなんだ」 http://www.jps.gr.jp/forum/forum01.htm

*2:個人的には、いつも見聞きした話なので。