通夜に考える

田村隆司さんのお通夜が自宅近くの式場で開催され、私も最後のご挨拶にうかがいました。私は比較的早く会場に入ってしまったので最初は分かりませんでしたが、かなり多くの方が訪れているようでした。100人は軽く超え、2〜300人以上もこられていたのではないでしょうか。それもそうですね、いったい世界で何人が彼の元に指導を受け、プロダイバーとして活躍しているか分かりません。お店のツアーでほとんど行かない石垣島でも、彼のことを知っているプロダイバーはたくさんいます。
私がスキューバダイビングを始めてからまだ5年あまりしか経っていませんから、そんなにたくさんお話ししたわけではありません。しかし今の私のダイビングの世界観というか、ものの考え方というものは、彼の影響をもっとも強く受けていることは当然だと思います。自分の教え子だからと、ダイビング業界のきわどい質問にも正直に、懇切丁寧に答えてくれるような誠実さと、カリスマ性を持った何ともいえない笑顔が、私にとっての彼の魅力でした。
彼の哲学は「スキューバダイビングとは楽しむもの」に尽きます。それを実現するために、ココナッツというダイビング屋さんを17年かけて国内屈指のものに育ててきました。彼にとっては、都市型ショップはやれ料金が高いだの、器材を売りつけるだのといったありがちな批判はまったく取るに足らないものでした。
もう何ヶ月も前から体調を崩し、10月頃からは覚悟の闘病だったようですが、私にとっては突然の訃報でした。もう彼とダイビングについて、海について、語れないということについて実感が湧いてきません。きっと後からくるのでしょう。何しろ46歳というのは早すぎます。まだまだ、これから私も少しずつ年季が入ってきて、今までより少しは深い話がさせてもらえるものと思っていたのになぁ…。本当に残念です。
普段から忙しく、最近はかなりお疲れのようでした。どうぞゆっくりお休みください…