マーケティングの妙

産経抄をパラパラと見ていたら「負け犬」という言葉が目にとまりました。成人式にあたって女性の結婚観について語っているようです。こと結婚となると、女性の立場でしか語られないのが相変わらず残念なところですが…。
結婚するとは本当に「勝ち」なのでしょうか? 私の結婚観を長々と聞かされたことのある方ならご理解頂けるかも知れませんが、私の考えではそれはまったくのまやかしです。私に言わせれば結婚とは「勝ち」よりは「負け」に近い行為です*1。従って結婚しない(できない?)ことをもって「負け犬」と呼ぶのは私としては理解に苦しむところです。
ところで、酒井 順子さんの本「負け犬の遠吠え」における「負け犬」は「30代以上で未婚、子なしの女性」が定義となっています。しかし実のところその扱いは曖昧で、どの部分をもって「負け」なのかが今ひとつ明確ではありません。どうも自尊心のカタマリである女性の目から男性を見たときの奢りの気持ちが結婚につながらない、それを「負け犬」と呼んでいるように読み取れます。でありながら、「負け犬」を否定的に語っているわけでもありません。
ではなぜこの本はそんなに話題になるのでしょうか?それは「負け犬」という言葉がマーケティング的にキャッチーだからに他なりません。この言葉には2つの面があります。

  • 定義通り「負け犬」であること
  • 結婚している、あるいは子供のいる女性は「勝ち犬」であること

以前、何より女性の自尊心をくすぐるのがマーケティングの基本とされてきたと書きましたが、この言葉はまさにその両面を利用しているわけです。
仮にこの本の題名が「結婚できない女の叫び」だったとしたら、ほとんど注目されることもなかったでしょう。そうではなくこの本が売れた結果として「負け犬」という言葉が一人歩きしてしまいましたが、酒井さんが言っていることは実はまったく注目に値することでも何でもないような気がします。

*1:もちろん、結婚が悪い結果の原因になるかどうかは人によって異なるので、一概に「負け」というわけではありませんが。いずれにしても、結婚の意味についてきちんと語れる人はほとんどいません。