デジタル一眼レフカメラの明日はどっちだ?

インプレスのサイトに今年の「デジタルカメラ10大ニュース」を投票できるページ*1ができていてのぞいてみました。5つのカテゴリごとにいくつかずつの項目が並んでいます。
ざらっと見て感じることは「今年はデジタルカメラにとってこんなにつまらない年だったのか!」ということです。何も革新的なものなんてありはしなくて、10大ニュースに選ぶにはあまりにどうでもいいことばかり。ダイバーとしての目と一般の目が違うのはもちろんとしても、「ビックカメララゾーナ川崎店オープン」がなぜ10大ニュースの候補になるんだか??
特に意外につまらないのが、デジタル一眼レフカメラの項目です。今年の春頃から、次世代カメラ選びに悩んでいた私としては気になる点でしたが…「ボディ内手ブレ補正搭載が2社」って、何かこじつけでは? で、重要なことに思い当たりました。今のデジタル一眼レフはまだまだデジタルカメラの過渡期の一つの姿に過ぎない…それも来るべき大変化の前の姿だということです。
そういえば昨年の10大ニュースにオリンパスパナソニックの共同開発が入っていました。フォーサーズは概念としては立派ですが、私は現時点では失敗していると見ています。センサーがフルサイズの半分、面積比1/4なのに、カメラやレンズが全然コンパクトにならないのはおかしすぎる*2。極論すれば体積比で1/8になってもいいはずで、一般的には画像センサーが大きい方が画質面で有利ですから、他に従来機と差がないのではフォーサーズを選ぶ理由がないでしょう。今年の10大ニュースがつまらない責任の一端…もっと言うと、業界の抱える最大の潜在的問題がここにあると思います。
…というのも、これは他のいわゆるAPS-Cサイズのカメラにとっても同様のはずなのです。センサーがフルサイズの2/3ならその分コンパクトになってもいいはず。しかし、昔のフィルムカメラに比べれば十分膨らんだAPS-Cサイズのカメラで一般にフィルムを越える画質の写真を撮れるようになったという話は聞いたこともありません。
さぁ、そこで出てくるのがフルサイズの画像センサーをもつカメラだ!なぜなら、フィルムの頃から使われているレンズ資産の価値を最も有効に引き出せるのは、それらのカメラだからです。
…それはもっともですが、これがデジタル時代には大きなワナだったりします。多くのメーカーはなぜフルサイズの画像センサーを大量生産し、コストを下げてフルサイズ一眼レフを普及させようとしないのでしょうか。ひとことで言えば、そんな方向に将来性はないと考えられているからです。
センサーやフィルムが光を受ける面積が同じならデータ量も同じ。大きければデータ量が増え、画質は上がるはずです。しかしそれは「デジタルとアナログの違いを無視すれば」という仮定の元であって、現実にはコスト、技術の進歩、時間軸などを考慮すれば当然違ってきます。例えば一コマにかけられるコストが非常に小さいフィルムと、カメラごとに固定される画像センサーを同じに比べるのは、フィルムにとってあまりにも不利です。別の言い方をすると、同じ画質の写真を撮るのに画像センサーをフィルムと同じサイズにする必要は…少なくとも将来的にはなくなるはずです。
もうひとつ、上記の「フルサイズならレンズ資産の価値を有効に引き出せる」というのがミソです。つまりこの時点で、より画質の高い写真を撮るために良いレンズを使うという、目的と手段が逆転してしまっています。一眼レフユーザーとしてはあまり信じたくないけれど、デジタル時代には「本当は」あんな大仰なレンズは必要ないはずなのです。
デジタルカメラは今後のさらなる画質向上をあてにするにしても、実は今の一眼レフのようなレンズを含めた大きな図体を持ち続ける必要はぜんぜん無いはずです。でも「過去の資産」(いわゆる遺産)を無視してはデジタルへの移行が受け入れられないので、仕方なく伝統を引きずっていると思います。
「一眼レフ」を維持するにしても、本当はデジタル時代にもっと適したボディ、マウント、レンズがあるはずです。今のデジタル一眼レフは移行の一コマに過ぎず、どのメーカーも遅かれ早かれ別の規格へ移行していくことでしょう。
フォーサーズにそれを期待した人もいたはずなのですが、時代が早すぎたのでしょうか。来年はその面で新機軸を打ち出してくるメーカーが他にもあることに期待しましょう。

*1:デジカメWatch「読者が選ぶ2006年デジタルカメラ10大ニュース」 http://dc.watch.impress.co.jp/static/2006vote/news.htm

*2:ただし、そのためにはレンズの精度も上げなければならないので、たぶんそのままの比率でコンパクト化にはならない。