水中ハウジングとプロテクタ、防水ケース

しばらく水中用カメラの話題が続きます。
最近の検索傾向を見ていると、どのカメラが水中用に向いているのか、水中写真がうまく撮れるカメラはどれなのか、探している方が(ダイバー人口は増えていないのに)意外に多いようなのですが、その前に気になることがあります。
典型的なのが「純正ハウジング」という言葉。「××(というカメラ)はメーカーが純正ハウジングを出しているから水中向きだ」「××はメーカーが純正ハウジングを出していないから水中で使えない」という議論は、2つの意味で誤っています。
水中用カメラ選びで幸せになりたければ、まずそこの認識を改めましょう。
カメラメーカーが主にコンパクト機用に自社製品として売り出しているものは、「防水プロテクタ」や「ウォータープルーフケース」(以下、「プロテクタ類」と呼びます)などであって、水中用「ハウジング」ではありません。以下は主なカメラメーカーの製品名の例です。

なぜメーカーは「ハウジング」という言葉を避けるのでしょう。考えられる理由は、実用性の違いとコストの違いです。
プロテクタ類の実用性とは?一般的には仕様上の最大水深40m、ポリカーボネート製(マスクの側面やCD/DVDと同じ)のプロテクタ類は、深く潜ったときに「なぜか一切の操作を受け付けなくなったが、浮上してきたら直った」というのはよくある話です。これは、プロテクタ類が水圧で変形した結果、どこかのボタンが押しっぱなしの状態になったなどの原因が考えられます。そもそもポリカーボネートですから、軟らかいことによって薄くても破損は避けやすいのですが、微妙な変形は避けられず、わずか1cm四方に最大4kg、プロテクタ全体では数百kgもの圧力がかかる水中はかなり苛酷な環境なのでしょう。このような現象がおきがちなので、残念ながらプロテクタ類は「プロ用途」に耐えるほどの実用性があるとは言えないのです。その代わり、コストは安くなります。その他に、軽いので地上での持ち運びは便利で、コンパクトにしやすいので水中でも取り回しやすいのです。
「ハウジング」と呼ばれるものは、ほとんどカメラメーカー以外が造る、一般的には仕様上の最大水深60〜100m程度、アクリルやアルミニウム、マグネシウム合金などの金属の組み合わせのような材質で、深く潜ってもほとんど変形しないことを前提に造られています。たとえばアクリルなら10mm程度の厚さがあるので、より高い実用性の代償として重く大きく、コストも高くなります。
そういった違いの他に、絶対にそうとは言い切れませんがメンテナンス性の違いがあります。ハウジングは使用頻度にあわせてオーバーホールに出すのが普通で修理も可能ですが、プロテクター類ではあまりそのようなことはせず(Oリング交換程度ですね)、壊れたとしても修理するよりは新品交換になりがちで消耗品と考えたほうがよさそうです。プロテクタ類はコストが低いのでそれでも良いような気もしますが、ひとつの機種に対して長く生産を続けられないために、カメラを長く使いたくてもプロテクター類が交換を必要とし、在庫がなくなったという状態になるとどうしようもないという弱点もあります。
説明が長くなってしまいましたが、要するに

  • 「純正ハウジング」というものはほとんど実在しません。
  • メーカーがプロテクタ類を出している/いないでそのカメラが水中に向いているかどうかを判断するのは正しくありません。

ではどういうカメラが水中向きなのか?は今までさんざん書いてきましたが、また次回も少し書きましょう。